農法改良の動機と方法(旅での見聞・交流、田見舞、例し試み)の実際、改良農法の普及と受容とはどのようになされてゆくのか、さまざまな農書をもとに考察し、「作り暮らし」としての農法を提唱する。
『農業全書』と『農業余話』に学び,自らの新知見や試験を通じて得られた稲作技術を中心に書いた栽培・経営書。これが財政窮迫に悩む松江藩の役人の目にとまり,藩内に普及された。
著者親子が陸稲・木綿など8種の作目について試作した結果の報告書。これらの作目は,藩が殖産興業の観点から奨励したものだが,主体的に取り入れた上方の先進地の技術が反映されている。
伊勢で発案された種もみの薄まき法が,「不二道」という民衆宗教の人脈にのって,信州の伊那地方に普及した事情を物語る文書。農法の教科書という側面と「教伝」の性格をあわせもつ。
大和の老農・中村直三は,角力番付,一枚刷り,小冊子など,農民にわかりやすい形式を活用して,自らの農法を積極的に広めた。
播磨国二見の小山某が,製糖業の先進地・讚岐国の白鳥新町の人から砂糖製法の技術を聞き書きしたもの。藩の統制下にあった製糖技術は,このように聞き取りのかたちで他国へ伝播した。
養蚕の先進地・米沢藩領羽前国置賜郡居住の著者が秋田藩から招かれ,桑の植樹と養蚕技術向上のために藩内を巡回したときの日記。後進地域における技術普及のようすがうかがわれる。
長州人による東日本農事視察記。関西・東海・関東・信州各地の農業事情を明らかにするとともに,長州藩の稲作の生産力の高さをも逆に照らし出している。