口絵

<畜産・獣医>総合解題 近世日本の畜産と獣医術——独自な品種改良と漢方・蘭方の融合の曙——

江戸時代は牛馬の飼育やペットの飼育が全国に広がり、その飼育法と病気の漢方治療術が最高に発展した時代だった。他方蘭方獣医学が導入され、馬の解剖書が著わされた。東西の獣医術が併立した近世畜産の意義を説く。

鶉書<うずらしょ>

江戸時代には,小鳥の飼育が流行し,鳴き声や体型の優劣を競う「鳴き合わせ」が盛んに行なわれた。本書はうずら飼育者を対象に,よい鳴き声・体型についてポイントをあげて詳述したもの。

犬狗養畜伝(摂津)<けんくようちくでん>

作者は幕末期の戯作者で,絵画・本草学,果ては商売にまで通じた異才。犬の飼い方と治療法について述べているが,真のねらいは犬の病気を治す薬の宣伝にあるという遊び心あふれた本。

廐作附飼方之次第<うまやつくりつけたりかいかたのしだい>

本書の特徴は,乗用馬を飼育するきゅう舎のつくり方と馬の飼い方および飼料について,実用性の観点からきめ細かに述べているところにある。また,人の食事との対比など,叙述にも工夫がみられる。

牛書<ぎゅうしょ>

牛のさまざまな病気を番付にして載せ,漢方による治療法を示した伯楽(獣医)ハンドブック。中国本を手本にしているが,伯楽たちが自らの診療経験をふまえて実用書として完成させたもの。

安西流馬医巻物<あんざいりゅうばいまきもの>

粉川僧正を開祖とする安西流の馬医学の彩色絵巻。馬に鍼をうつ部位とその効果が陰陽五行説と仏教の哲理にもとづいていることを,馬体の絵図や五行の配列をもって示している。

万病馬療鍼灸撮要<まんびょうばりょうしんきゅうさつよう>

馬の病気治療のハンドブック。利用者のために巻頭に鍼灸のつぼの部位図を掲げ,生薬の配合についても詳細をきわめている。現場の要求に十分応えようとした実用性の高い馬医書である。

解馬新書<かいばしんしょ>

著者は,馬医術の基礎としての馬の解剖の重要性を痛感し,当時最新の西洋馬医書や,人医書の『重訂解体新書』などに学びながら本書を著わした。近代馬医学への橋渡しとなった名著。