口絵

蚕飼養法記(陸奥)<こがいようほうき>

従来,蚕業で重要な位置を占めたことがない津軽で生まれた,わが国最古の養蚕書。繭の買入れや機織を行なう津軽藩「織会所」の技術者,つまり領内を巡回して農民たちを直接指導した織物師たちが伝えた養蚕技術の集大成。

養蚕規範(加賀)<ようさんきはん>

越中五箇山,飛騨白川郷,加賀白山麓という草深い山村で,寒暖計による温度管理など養蚕先進地に劣らない技術水準にあった,幕末期北陸地方の養蚕・製糸業の実態。蚕種問屋の著書を加賀藩士の国学者がまとめ直したもの。

蚕茶楮書(伊勢)<かいこちゃかみのきのふみ>

有力な伊勢商人で,地域社会の振興をはかった事業家でもある著者は,在所の村人を督励して広大な園を開墾した。それを背景に,桑・茶・こうぞをつくる利益,仕立て方,取り木・挿し木のやり方,実生での育て方を説く。

製茶図解(近江)<せいちゃずかい>

彦根藩が開国後の主要輸出品として茶を領内に奨励するために刊行したもので,豊富な図で最新の技術をわかりやすく解説している。栽培編と加工編に分かれ,採種から樹の生育と分植まで,摘葉から二番茶・玉露の製法,輸送まで,全般にわたる。

樹芸愚意(因幡)<うえものぐい>

天保飢饉による疲弊から未だ癒えない鳥取藩の知行地に,ころび(油桐)・はぜ・漆など商品作物の植樹を奨励した記録で,いわば特産品による村おこし,農村復興策の事例報告。新しい林業を模索するうえで参考になる。