下野国上三川の老農・田村吉茂の著。数ある農書のなかでもとくに農民的発想の強い書として著名。現場での観察から雌雄説を拒否し,陰陽説に対しても観念論に陥らない。
80歳をこえた著者晩年の著。一貫して米麦中心の農業を主張し,商品作物の栽培には消極的。作物ごとの適地も記す。
農業にかかわる万般を数量的にとらえようとしたもの。年間休日数,田畑の必要労働力,生活費などを見積もり,収支視点から作物を選択するという段階にまでいたっている。
『農家肝用記』に続いてより厳密な田畑の作物の収支計算を試みた書。生産費,生計費などが費用別に計上されている。
老農・田村吉茂の遺訓。営農,栽培のみにとどまらず,その農業観,思想をのぞかせ,吉茂の農業論の根源を知りうる。