県内陸で田園地帯や丘陵、奥羽山脈にまで広がる加美《かみ》町の山間部で教わった雑煮です。この地方では、魚類を雑煮に使う習慣はなく、精進に近い雑煮が食べられてきましたが、近年では多くの家庭で鶏肉など動物性の具が使用されるようになっています。その中で、野菜類と油揚げ、凍み豆腐といった精進の雑煮が受け継……
奈良盆地の西南部に位置する葛城《かつらぎ》市では、山がちな地域では河内《かわち》との境から流れる川の水、平地では池の水を利用して農業が営まれています。当時の農業は1年おきの田畑輪換方式で、稲作をしない年の田が畑になり、冬には白菜、大根、にんじんなどがつくられ、日常のおかずによく使われました。 な……
夏、献立にもう一品欲しいときによくつくる、大洲《おおず》の料理です。新鮮な魚介類がなくても、入手しやすい油揚げやちりめんじゃこが旨みになり、油揚げが酸味をマイルドにします。はすいもは里芋の葉柄《ようへい》・ずいきの一種で、7月から9月が旬。暑い夏でも食べやすいさっぱりした食味が特徴です。はすいも……
クルミ入りのいなりずしは、県中部の笠間市のすしです。クルミが特産品で、市内にある笠間稲荷神社は胡桃下稲荷《くるみがしたいなり》とも呼ばれ、地元でも親しまれています。神社の参道の店で、さまざまな油揚げの料理やお土産が売られたのが始まりで、「そばいなりずし」も生まれました。いろいろないなりずしが各家……
宮崎県のいなりずしは三角形、中には具だくさんのばらずし(『すし ちらしずし・巻きずし・押しずしなど』p24)が入っています。行事や人寄りには何かというと季節の野菜やてんぷら(さつま揚げ)、こんにゃくなどを入れたばらずしをつくり、いなりずしにもこのばらずしを使うのです。ばらずしをにぎり、あっさりと……
京都の惣菜は始末(素材を無駄なく利用する)の料理ともいわれ、おからの炊いたんは日常よくつくった料理のひとつです。安い食材であるおからと、家庭に常備してある乾物(干し椎茸、かんぴょう、ひじきなど)や旬の野菜を利用し、具の変化をつけることで季節を問わず食べられていました。とくに商家では、月末のやりく……