阿武隈《あぶくま》地域には、昔から凍み豆腐や凍み大根など、冬の寒さを利用してつくる保存食があり、凍みもちもその一つです。標高400~600mの鮫川村では、気温がマイナス20℃前後になる1月末頃に、もち米と一緒にうるち米粉とごんぼっぱ(オヤマボクチの葉)をついてもちをつくり、スライスしたものを2カ……
県南の石岡市やかすみがうら市、土浦市で食べられている、青のりを混ぜた緑色の半円形のもちで、草もちのようですが、焼くと草もちとは違う独特の香りがします。正月や人寄せのとき、普段でも多めにつくり近所にも配って皆で楽しむものでした。今は石岡市内の菓子店で一年中販売され、商店街の店先では店主がたがねもち……
日光市の北部、福島県に接する旧栗山村に伝わる、うるち米をついたもちです。きめ細かくやわらかで、もっちり感はありますが、粘りすぎずに噛みきりやすいです。「ばんだい」は板台のことで、昔は板の上でついたのでこう呼ぶといわれます。 栗山村は山間地で、沢水が冷たすぎて田では水稲が育たず、陸稲《おかぼ》が少……
県西部の遠州地方で江戸時代から食べられている「うるち米」のもちです。名前の由来は、米を粉にすることを地域では「はたく」というから、米の選別(ふるい分け)の際、「はたいた」ときに落ちるくず米を使うから、袋や俵を最後まで「はたき」出して使うからなど、諸説あります。袋井市など大井川と天竜川にはさまれた……
お釈迦様の誕生日である4月8日の灌仏会《かんぶつえ》(花まつり)にお供えする行事食で、お釈迦様の頭、螺髪《らほつ》をかたどってつくったお菓子です。表面がゴツゴツした形ですが、食べると甘味と豆やくるみ、あられのコリコリとした歯ごたえが楽しめます。「こごり」とは、煮こごりと同様にちょっと固まった状態……
おはぎというと、炊いたもち米のご飯をつぶして丸めますが、これはつぶさず丸めず、あんをかけて食べます。県内では鹿行《ろっこう》地域(鹿嶋市・神栖《かみす》市)だけのものです。 「三つ目」は、出産後3日目に食べさせることに由来しており、出産した女性の疲労回復と乳の出がよくなるよう願ってつくられた祝い……
きな粉に包まれただんごを食べると、ご飯粒の存在感はありながら、ねっとりとした粘りけも感じます。うるち米と里芋でつくったおはぎのような「もち」です。 320年ほど前、藩命により石川県小松市の今江町から現在の黒部市に近い入善《にゅうぜん》町に20組の若夫婦が開拓として入り、今江村をつくりました。いも……
一般的におはぎやぼたもちと呼ばれるものですが、尾張水郷地区では、炊けたご飯を釜の中でごんごんつぶすのでこの名前がついたといわれています。またご飯は半分ぐらいつぶすので「半殺し」とも呼ばれ、いずれもユニークで楽しげな、少し物騒な名前です。 農あがり(田植えが終わったとき)や稲刈りの手伝いにきた人の……
もちつきは、本来臼と杵でぺったんぺったんと音が響く家族親戚総出の作業で、ついたもちは皆で分けました。しかしもち米が少ないとき、家族だけで食べたいときに音を出さずにもちをつくる方法として、鍋の中でつきこねる「なべもち」が考えられたといわれています。また隣近所に内緒、同居していない親戚に内緒でつくる……
刈り入れが終わる鎌納めの日は例年11月10日頃で、11月最初の雨降り日と重なると、「亥《い》の子《こ》」といって野休みにします。この日につくる里芋入りのぼたもちがいもぼたで、亥の子もちともいいます。 中南部でもとくに葛城市は水に恵まれた米どころで、また品質のよい里芋がとれるので、味のよいいもぼた……
米粒が半分くらいつぶれるよう「半殺し」につくので、この名前がつきました。中にはささげのこしあんが入っており、表面にはきな粉がまぶしてあります。あんを外側につけたぼたもちやおはぎは彼岸につくりますが、はんごろしは季節を問わず、村の人が大勢集まるときにつくりました。風味豊かなよもぎとあんが合わさると……
手づくりの水あめです。麦芽の酵素が米のでんぷんを糖化した汁を煮詰めたもので、砂糖は一切使用しません。ご飯の甘さが濃縮されて、口の中に残らず奥深いコクがあり、ほっとする懐かしさを感じます。「ぎょうせん」という呼び方は生薬の地黄を加えた水あめ「地黄煎《じおうせん》」から来ているようです。 県北東部の……
ミキは奄美群島の長寿者が愛飲している、米とさつまいもときび砂糖でつくる発酵飲料です。つくり方は独特で、生のさつまいもに含まれている酵素(アミラーゼ)を利用して米のでんぷんを分解し、そこに植物性乳酸菌が働いてさわやかな甘味とほのかな酸味がつきます。乳酸菌が生きているので最初は酸味はまろやかですが、……
下北地域では、端午の節句になるとべこもちをつくります。べこもちはもち粉とうるち米粉に黒砂糖と白砂糖を入れて別々に混ぜ、2色の生地を組み合わせて模様をつけたもち菓子です。きれいに模様を出すのは難しく、稲わらを束ねた「たばね模様」のつもりなのに、失敗すると「これはがに(蟹)だが?」とからかわれること……
米粉の生地であんを包み、色をつけたもち菓子で、花まんじゅう、花だんご、ひなだんごとも呼ばれます。女の子のいる家庭では桃の節句には必ずつくり、くるみと黒砂糖入りの「きりせんしょ」(『米のおやつともち』p68)とともにおひな様や神様、仏様に供えました。 このお菓子が見られるのは県央部の北上川流域の水……
砂糖醤油で味をつけたもちで、ひと口かじると中から黒砂糖がとろっと出て、くるみや黒ごまの風味と歯ごたえがおいしいです。古くから盛岡市や滝沢市、花巻市、遠野市、紫波《しわ》町などの県央部で桃の節句には「ひなまんじゅう」(『米のおやつともち』p67)とともにつくり、おひな様や神様、仏様に供えました。農……
米どころ秋田県ならではの米の粉のおやつです。練った米粉を砂糖と酢で味つけした酢の物でもあります。甘酸っぱくさっぱりとした風味と、とろりとした食感が特徴で、夏によく食べられます。昔は精米過程で出る砕け米(こざき)を使ったため、県南では「こざき練り」とも呼ばれています。 県北西の八郎潟町は昭和20年……
県北東部の新庄《しんじょう》市や最上《もがみ》地方では、旧暦の桃の節句になると色とりどりのくじらもちを大皿に盛りつけてひな壇の前にお供えします。くじらもちに使う米の粉は細かいほど仕上がりがなめらかになります。かつては米を3日以上浸水してから乾燥させ、製粉所に持ち込んでいました。仕込みから蒸し上が……
米粉の生地を薄くのばして焼いた素朴なお菓子です。材料も少なく調理も簡単ですが、指で表面に筋をつけることで、焦げ目のつき方に変化がついて風味や食感の違いが楽しめます。うるち米の粉なので歯切れがよく、小腹がすいたときは何枚も食べられます。県内では米粉の代わりに小麦粉を使ったり、中に煮豆やあんを入れた……
米粉、砂糖、塩、熱湯でつくる、ほんのり甘くもちもちした食感の素朴な食べもので、県北を中心に親しまれている家庭の味です。また筑北村坂井地区では、金太郎あめのようにして花柄などの美しい模様の、目でも楽しむやしょうまがつくられています。お釈迦様が入滅された旧暦2月15日の涅槃会《ねはんえ》に供えるもの……
府南部の京田辺市あたりでつくられてきたものです。この地域ではあんを中に包むことはせず、間にはさんで「だんご」をつくります。また、生地を型押しして模様をつけるのも独特で美しく、桃の節句に花を添えるものになっています。型は以前は木型を使いましたが、生地が型に残って洗う手間もかかるので、カットガラスの……
木曽地方では、月遅れの6月5日の端午の節句にちまきや柏もちの代わりに朴葉巻きをつくり、神仏にお供えして子どもの成長を祈ってお祝いしました。米の粉をこねた皮に小豆あんを包み、朴葉でくるんだ蒸し菓子で、朴葉の独特な香りがし、葉の殺菌作用で日持ちがするため、昔は保存食としても食べていたそうです。 葉は……
京都の夏を彩る7月の祇園祭では、厄払いにわらをクマザサで巻いたお守りのちまきがまかれたり売られたりします。これは家族の無病息災を願って玄関に飾ります。一方、殺菌作用のある笹類の葉にだんごを包んだちまきは端午の節句につくり、男の子の無病息災を願いました。1~2週間は常温で竿にかけておいても傷まず、……
県東部の出雲地方では月遅れの6月の端午の節句に、ちまきとも呼ぶ米粉でつくった笹巻きを食べます。砂糖もあんも入りませんが、食味のよい奥出雲の米でつくったもちはやわらかくなめらかで、きな粉や砂糖醤油で食べるととてもおいしいものです。地元の人は「これを食べて大きくなった」というほどその時期にはたくさん……
もち米の粉とうるち米の粉、ゆずの皮と味噌、砂糖を練り、真竹の皮に包んで蒸したもち菓子で、県北部の菊池市で食べられています。以前は11月頃になるとどの家庭でも黄色くなった庭のゆずをとり、一度にたくさんつくりました。もちもちとした食感で、ゆずと味噌、竹の皮の香りが口の中に広がります。最近はつくる家庭……