伊吹そばは、県北東部に位置する伊吹山麓で古くから栽培されてきた在来のソバで、実が小粒で香りが強いのが特徴です。かつてはどの家でもソバを育てており、石臼で粉にひいては、そばがきやだんごにして汁に入れたり、大晦日にそばを打って食べていました。最近では家庭でそばを打つことはなくなりましたが、乾麺や生麺……
県北部で日本海に面する香住《かすみ》港の主力漁業である底曳《び》き網漁では、松葉がに、かれい、はたはたなど季節に応じてさまざまな魚種が水揚げされます。ニギスは5月と9月が旬で、姿形がキス科のシロギスとよく似ていることからきすとも呼ばれていますが、シロギスとはまったく別の種類のニギス科の魚です。名……
県内各地でつくられている凍み大根と里芋やにんじん、干し椎茸などの具材を一緒に炊いた煮しめです。凍み大根は、冬の寒さを利用してつくられる保存食で、真ん中に穴があいているものは、「へそ大根」や「ババべそ(おばあさんのへそ)」とも呼ばれます。輪切りにした大根はゆでてから真ん中に串やワラを通して軒下に1……
歯ごたえがよく甘味のある干し大根に、いりこのうま味がしみこんだ煮しめです。輪切りの干し大根は大田市以西の西部地域でつくられるもので、通称「肛門干し」。真ん中に穴があり、その穴に向かって放射状のしわがたくさんあるその形状から、昔からこう呼ばれるそうです。東部の出雲地域では、干し大根は輪切りも丸干し……
瀬戸内海・塩飽《しわく》諸島の広島では、たこのような形をした「たこ干し」と呼ぶ切り干し大根をつくります。たこ干しは普通の切り干し大根と比べて甘味や風味が強いのが好まれており、たくさんつくり冷蔵庫で保存し、季節の野菜や油揚げと煮て食べます。大根の戻し汁は甘味と独特の風味もあるのでだし汁として料理に……
秋から冬にかけて収穫した大根の保存食としてつくられたたくあんも、春になり気温が高くなると発酵が進み、味も酸っぱくなってきます。この古漬けを有効に利用するためにつくられたのが、古漬け大根の炊いたものです。発酵した古漬け大根の独特の味と風味に油が加わり、さらにピリッとした赤唐辛子の辛みで、大根の煮物……
三重県は角もち・丸もち、醤油味・味噌味、そして具の種類や組み合わせで、非常に多様な雑煮がつくられています。ここで紹介するのは伊勢平野の中心である鈴鹿市、白子《しろこ》のすまし仕立ての雑煮です。大晦日に大鍋一杯《いっぱい》の輪切りの大根を煮ておき、ときどき火を入れて三が日はその大根と角もちだけの雑……
大阪の雑煮は白味噌で焼かない丸もち、子芋(里芋)、大根、焼き豆腐が定番です。 大阪の人は甘い白味噌が好物で、とくに雑煮用には普段使う白味噌より上等の“雑煮味噌”を注文したり手づくりしました。普段の白味噌の味噌汁よりだしをきかせた、こくのある雑煮で三が日毎朝祝いました。家庭によっては「うるうもち」……
紀州藩の城下町として栄えてきた和歌山市と、その南側の海南市から紀美野《きみの》町にかけて食べられている雑煮です。白味噌仕立てに、丸い小もちと小豆をつきこんだ赤い福もちを焼かずに入れ、小芋(里芋)、青身大根、真菜《まな》を入れます。年末になると雑煮用の青身大根と真菜が店頭にたくさん並ぶのは、今もこ……
広島県の雑煮には塩ぶりが入ります。広島ではぶりは大ごちそうで、年末に塩ぶりを1尾購入し、無駄なく食べ切りました。ぶりは島根県から入ります。山陽から山陰に抜ける交通の要である可部町と、県北にかけては、昔は塩ぶりを家々の軒につるし、大きさを近所と競ったそうです。 元日という一年の中で最もハレの日に食……
札幌まつりは明治のはじめから続く北海道神宮例祭のことで、毎年6月14日から16日に行なわれます。本格的な初夏の訪れを告げる行事でもあり、札幌市民最大の祭りとして親しまれてきました。 北海道神宮のお参り、山車《だし》の見物、中島公園の露店と楽しみが多い祭りですが、15日の例祭の日に家族で食べるごち……