地域に密着した農協の営農・経済活動を支える 『JA版 農業電子図書館』

地域に密着した農業協同組合運動の活動拠点であるJAの支店。この支店の機能強化、とりわけ営農相談を中心とした“窓口での相談機能強化”に向け、タッチパネル対応の「JA版農業電子図書館」(『ルーラル電子図書館』を母体にしたJA独自の情報提供システム)の導入が全国的に広まっている。

■高齢者にもやさしい簡単な操作


黄色い老眼鏡をかけて、組合員の遠藤さん

 山梨県のJA梨北(韮崎市)では2006年6月にこのシステムを導入し、全支店窓口とJAグリーン(農業資材などを扱う経済店舗)にタッチパネルを配置した。
 明野支店では、組合員の遠藤勝さんがちょうどこのタッチパネルを操作していた。かけているメガネは金融課の窓口にある黄色い老眼鏡だ。



タッチパネル対応の「JA版農業電子図書館」のトップ画面

 「年を取るとね、困っている病気や虫を言葉で説明するのが億劫になる。でもこれだと、自分の都合が良いときに自分のやり方でゆっくり調べられるから助かるね。なにより人の世話にならずにすむので気が楽だよ。」
 操作の仕方を説明していた窓口の清水清子さんも「これだと自分で調べてもらうことができるから助かります。指導員さんが出払っている時でも、出直してもらわずにすみますからね。それに、一緒に画面を見ていると、今組合員の方が困っていることや、関心があることが自然とわかってくるので自分も勉強になります。」
 窓口のパートさんや嘱託職員の方でも、わざわざ栽培技術やコンピュータの勉強をしなくても、操作のサポートをしながら簡単な営農相談に対応できると言うわけだ。


■JAらしいサービスで“競争力のあるJAグリーン”に


JAグリーン(農業資材などを扱う経済店舗)にも設置

 JAグリーンの浅川忠明さんは、元営農指導員のベテラン相談員。たとえば病害虫の問い合わせでも、やりとりだけで「お客さんが困っている虫はたぶんこれだろう」と判断できる頼もしい「先生」でもある。
「でも、実際にその虫の写真を見てもらうと、ぜんぜん信用が違うんですよね」。話を聞いておそらくあの虫だろう、と察しがついたら、わざわざその虫の写真をタッチパネルの画面に呼び出してお客さんに見てもらう。「あ、この虫、この虫!」そのものズバリの写真が出るからお客さんも喜び、全幅の信頼を寄せてくれる。浅川さんは、近くにある農業資材量販店とは一味違う、JAらしいサービスで競争力のある店にしたい、という。


わかりやす診断場面も用意

  近年JAでは、土曜日も支店の資材窓口を開けるようになってきた。ただ、担当する職員は当番制。農業技術にあまり詳しくない職員が担当する日もあり、「農協職員なら何でも知っているはずだ」と、農薬の質問も寄せられる場合もある。そんな時でも、このシステムが職員をしっかりサポート。JAへの信頼もがっちり守られる、というわけだ。


■支店の売り上げが購買事業の下支え

 「県内のA農協のある支店の農薬の売り上げが激減しましてね、なぜかと思って調べてみたら、実は窓口の女性が盲腸で入院したせいだってわかった。まさに支店窓口こそが、経済事業の裾野を支えているのだな、と痛感しましたね」と言うのは、鹿児島県経済連肥料農薬課の中畠さん。支店窓口での相談対応が経済事業を下支えしている事実を見落とすまい、というのが中畠さんの指摘だ。「出向く営農」と「迎える営農」、ともにバランスよく進めていくことの重要さがあると言う。だから中畠さんは、このシステムにも大いに注目している。

■若手営農指導員を育てる手助けに

 長い間に現場で身につけた技術と勘がモノをいう営農指導。しかし、現在の産地を作り育てたべテラン指導員の方々も、あと数年すれば大量に定年を迎える。残るのは、中堅と若手。ただし、昔と違って今はデスクワークも多い。どうやってベテランの経験を若手に引き継ぐか。
 このシステムには、農文協が発行している『現代農業』や『農業技術大系』など、いわば全国的な農業の基礎情報に加えて、JAが扱っている防除資材情報や、今までに蓄積した地域独自の栽培暦や栽培技術資料などが自在に格納・閲覧できる。だから、このシステムを使って組合員の多様な相談にのることで、技術の課題や指導の経験を深め、必要な知識を身につけることができるのだ。
 もちろんこのシステムは、指導員が自分の職務机のパソコンからでも使えるようになっている。またJAに携帯式の情報端末機器があれば、現地や組合員の自宅でも活用でき、まさに“農業情報を仲立ちに、農家と一緒に知恵を出す”新しい「指導」を実現する手掛かりになるのだ。

■地域を支える組合運動のために

 このシステムを農文協に発注したJA梨北の堀川組合長は、このシステムを入れたことは「ゴールではなくてスタートだ」という。
「営農・購買事業を充実させることが農協経営の根底。地域に密着した営農指導こそがその起点だから、支店窓口での対応を充実したいと考えて導入したのです。組合員の要望にあわせてこのシステムを発展させ、同時に自分たちの仕事のありかたも変えていける、そんなシステムとして育てていきたい」と言うのが、堀川組合長の考えだ。だから農文協には、次々に新しい提案をしてもらいたい、という。
 JAは地域に暮らす人たちの生産と暮らし全体を、将来にわたって守り育てるために、信用・経済といった総合的な事業を行っている日本で唯一の団体。地域を育てることがいわば組合活動の原点。その基点は堀川組合長がいうとおり、支店である。農文協はこの「JA版農業電子図書館」の提供を通じ、JAが地域を守り育てる活動に寄与したいと考えている。

JA版農業電子図書館の特徴

 農文協が運営する「ルーラル電子図書館」に、JA独自の情報(扱い資材情報、栽培指針等)も取り入れることが可能なシステム。
 特徴は、(1)キーボード・マウス操作不要なタッチパネル方式 (2)A独自情報の提示が可能 (3)新鮮・正確・豊富な情報量 (4)農文協のサーバを利用するためサーバ機器不要

デモンストレーションを行います

 農文協では、ご希望があればシステムのデモンストレーションも行って、農協への導入相談にものっている。ご関心がある農協役職員、あるいは組合員の方は関係者ご相談のうえ、ぜひ農文協電子出版開発部までお問い合わせいただきたい。

 お問い合わせは
農文協提携事業センター
電子出版開発部
TEL:03-3585-1162 
FAX:03-3585-6466