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水田除草剤 草に合わせた散布時期と除草剤選びが肝心

「除草剤が効かない」のはなぜ?

(株)植竹虎太商店は、栃木県那須塩原市の黒磯駅前で肥料・農薬を販売しているお店です。秋にはお米の集荷や販売もしています。創業127年「農家さんの笑顔でメシを食う」をモットーに日々奮闘してきました。私はその会社の営業です。営業といっても農作物栽培のアドバイスをしたり、相談に乗ったりしているだけです。どんなことでも相談していただけるような存在を目指しています。

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お客さんと筆者(左から2番目。倉持正実撮影、以下Kも)

稲作農家の悩みのタネのひとつは雑草との闘いです。田植えが終わり、一段落すると「草が枯れない」「除草剤が効いてないよ」と毎年必ず声がかかり、現場に足を運びます。いまどきの除草剤は昔のものに比べて本当によく効きます。それなのに、効かないのはなぜでしょうか?

時間をかけて雑草や水田を観察すると、散布した時期やその時の雑草の状況が浮かび上がり原因がわかります。

たとえば「ノビエ2.5葉まで」という除草剤を使った圃場に行ってみると、ノビエの3葉目に除草剤がかかった褐色の斑点がついていました。ということは、散布時期が遅すぎたのかもしれません。

ヒエはイネの生育と非常に似ており、葉齢はおよそ1週間で1葉ほど進みます。日数を目安にすると「ノビエ3葉まで」なら、田植え後3週間以内(田植え1〜2日前に代かき)には散布しなければならないし、天候や土壌の状態などで生育が早まることを考えると2週間以内がベストでしょう。

草に合わせて散布時期と製品(成分)を選ぶ

ここからは当地で問題になっている雑草の対策方法を草種別にご紹介します。

雑草の発生時期が異なると、除草剤の適切な使用時期も変わります。5月上旬に発生するホタルイに対して5月下旬以降に除草剤を散布してもよい効果は得られないし、5月中旬に発生するクログワイに対して「毎年発生するから早めに5月初めに散布したんだ」というのでは抑えられません。除草剤には残効期間がありますが、やはり効果がいちばん高いのは散布直後ですから、散布タイミングは非常に重要です。

ホタルイ(イヌホタルイ)

私の最大の敵はホタルイです。発生初期は非常に小さいので見落としがち。しかしほかの雑草と比較すると生育スピードと生命力がケタ違いです。ノビエと比べると低温でも生育が進みやすいうえ、暖かくなると遅れを取り戻すかのように急速に生育します。少なくとも4枚目の葉が出る前に初中期一発剤でたたかなければ、その後は後期除草剤(茎葉処理剤)のバサグランをまくしか対処法がありません。

散布時期を守るほか、初中期一発剤の内容成分を選ぶことも重要です。ホタルイの特効薬と言われているベンゾビシクロンやブロモブチドを含む除草剤を選びます。その中でも「クサトリーDXフロアブル」はブロモブチドが最大規定量(18%)入っています。

※初中期一発剤をまいたのに、時期が遅かったのかホタルイが田んぼ一面に広がった

初中期一発剤をまいたのに、時期が遅かったのかホタルイが田んぼ一面に広がった

※図は、写真の雑草の発生時期と除草剤の散布適期。以後も同様

※図は、写真の雑草の発生時期と除草剤の散布適期。以後も同様

クログワイ

一方、クログワイは中期に発生する難防除雑草です。一つの塊茎から複数の芽が時期をずらして発芽してきますので、そのタイミングに合わせて除草剤を散布しなければなりません。

最初に出る芽の生命力は弱く、たいがいの初中期一発剤で枯らせます。しかし、1本目が枯れてから30〜40日後に2〜3本目が出てくるときには初中期一発剤の残効は切れかけています。ダメージがない場合、芽は1日平均1〜2cmずつ伸長しますので、1週間もすると10cm以上になります。「最初はすごく除草剤が効いていたが突然出てきた」という話は、こうしたクログワイの生態をよくあらわしています。

ではどうすればよいのか?まず初中期一発剤には「残効が長い」といわれるSU剤を使います。その後、遅く出た芽が出揃った頃に中期除草剤をまきます。

私の経験上、当地区ではSU抵抗性雑草(126ページ参照)はないに等しく、SU剤はまだまだ効果的です。しかし、SU剤といっても特徴は様々です。おすすめの初中期一発剤は「オシオキMX一キロ粒剤」。この除草剤の成分であるアジムスルフロンはほかのSU成分に比べて残効は短いですが、パンチ力(枯らす力)は強い。10〜20cmに育ったクログワイも枯らせます。完全に枯れなくてもイネ刈りまで生長を止められます。

「枯れない=除草剤が効かない」ではなく、生長を止めて光合成をさせず、根の働きを弱らせ、塊茎の養分を使わせることも根絶への第一歩。翌年芽を出す新たな塊茎をつくるのを防ぎます。

その後、同じ成分を含む中期除草剤をまくのがいいでしょう(「クサファイター」など)。葉に変化が現われたら、クログワイを抜き取ってみてください。塊茎が指で簡単につぶせるようなら除草剤が効いている証拠です。

それでも完全に根絶するには5〜7年くらいはかかるでしょう。クログワイの塊茎は、土中で芽を出さないままでもそのくらい寿命があるし、大きい塊茎ほど、枯らしたと思っても生き残ってしまい、翌年にも芽を出すことがあるからです。

初中期一発剤で1本目の芽を抑えたが、再び芽を出したクログワイ。再生した芽が伸び草丈が15cmになったところで中期剤をまいた

初中期一発剤で1本目の芽を抑えたが、再び芽を出したクログワイ。再生した芽が伸び草丈が15cmになったところで中期剤をまいた

中期剤の「クサファイター(アジムスルフロン含有)」をまいて枯れたクログワイ。枯れなかったとしても塊茎にダメージを与えられる

中期剤の「クサファイター(アジムスルフロン含有)」をまいて枯れたクログワイ。枯れなかったとしても塊茎にダメージを与えられる

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オモダカ

オモダカもクログワイと同じく塊茎で殖える雑草です。きれいな白い花が咲きますが、その開花時期に地下では恐ろしいことが起きているのです。ランナーの先に新たな塊茎が形成されています。生長さえ止めれば花は咲きません。そこまで弱らせると、新たな塊茎は形成されづらくなります。

ダラダラと発生するオモダカには、初中期一発剤としてプロピリスルフロンといった残効の長いSU成分を含む「ゼータシリーズ」などを選びます。

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白い花を咲かせたオモダカ。すでに翌年のための塊茎がつくられている

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ホタルイも、クログワイやオモダカも多い場合

また、ホタルイとオモダカがどちらも多い圃場では、ホタルイによく効くブロモブチドと、オモダカに卓効のプロピリスルフロンを含んだ「ゼータファイヤシリーズ」がおすすめです。

イヌホタルイのほかにクログワイが多い場合は体系防除が必要です。田植え後すぐにイヌホタルイをガッチリたたきたいので初期一発剤「ヨシキタシリーズ(ブロモブチド含有)」を早めにまいてから、クログワイによく効くSU成分入りの初中期一発剤や中期除草剤を散布するのがよいと思います。

残効期間中は水を切らさない

最後に、除草剤を効果的に効かせるために怠ってはならないのが水管理です。多くの除草剤がありますが、どれも散布後、田面に処理層(除草剤成分でできた薄い膜)を形成し、そこに雑草の芽を触れさせることで枯らします。

田んぼが長期間干されると、せっかく形成された処理層が分解されてしまいます。除草剤の残効期間中は、できる限り水を切らさないようにしてください。

雑草防除のためには、雑草の生態と除草剤の特徴をしっかり把握しなければなりません。私はできる限りその農家さんにあった使い方や除草剤などを把握するため、シーズン中は毎日、田植え長靴を履いて雑草と向き合っています。

(栃木県那須塩原市・市川一行)

この記事は『現代農業』2015年6月号に掲載されました。

この記事に関係のある書籍

原色 雑草診断・防除事典

著者:森田弘彦・浅井元朗/価格:¥ 10,000+税/発売時期:2014年6月

9784540131233