口絵

紙漉重宝記<かみすきちょうほうき>

強さで定評のある石州半紙の製造工程を,表情豊かな職人像とともに詳細に図解。原料こうぞの売買や紙の値段など採算についても細かく記す。山奥の村々が紙漉きによって経済を安定させるうえで,強力な武器になった。

績麻録<せきまろく>

江戸渋谷の住人が,越後国田沢村の庄屋宅に留して越後縮の生産工程を正確な挿絵とともに記録したもの。現在の重要無形文化財「小千谷縮・越後上布」をたどれる最も古い文献。縮布や織子,産地の習俗など,民俗資料としても貴重。

塗物伝書(陸奥)<ぬりものでんしょ>

津軽塗りの秘伝書。技法とともに,色漆の合わせ方,蒔絵の方法,箔・梨子地・青貝のつけ方など35項目を簡潔な表現で,詳しく分量をあげて記述。この古唐塗や青海波塗に学ぶことで,新しい現代の技法も生まれてくるだろう。

紀州熊野炭焼法一条并山産物類見聞之成行奉申上候書附(日向)<きしゅうくまのすみやきほういちじょうならびにやまさんぶつるいけんぶんのなりゆきもうしあげたてまつりそうろうかきつけ>

幕末,鹿児島藩は専売による山林経営を企画し,林産物の生産,輸送,山産物類見聞之成行奉販売を藩直営で行なう御手山の制度をつくった。その御手山の支配人が,先進地紀伊国熊野地方の白炭の製法,生産・流通機構などを学び,調査した報告書。

実地新験生糸製方指南(信濃)<じっちしんけんきいとせいほうしなん>

明治初期,日本の全輸出額の半分を占めた生糸類に粗製濫造の問題が浮上。それを克服しようと,長野県下高井郡中野町で生糸の改良に心を砕いた著者が,磨撚法(よりかけほう)や生糸製造の改良法を,精密な図を添えて説明する。

樟脳製造法<しょうのうせいぞうほう>

樟脳は,防虫・薫香材,強心剤(カンフル)などに広く利用される。この樟脳の需要が幕末の開国によってさらに増大し,ほうろく式から蒸留式の製造法,いわゆる土佐式樟脳製造法が開発された。本書はその解説書。