口絵

<特産>総合解題 特産物列島日本の再発見——モノ・ヒト・情報の生かし方——

四木(茶・桑・うるし・こうぞ)、三草(麻・紅花・藍)など工芸作物は諸国の特産物という性格をもち、その栽培・加工・流通は地域経済、国内経済の発展をになった。それを記す農書から現代的意義を考察する。

名物紅の袖(羽前)<めいぶつべにのそで>

羽前最上の紅花は,諸国特産物番付の東の関脇にあげられ,全国の7割5分を占めた特産物。その紅花の栽培から取引,加工,京への輸送にいたるようすを詳細に紹介した貴重な農書。

あゐ作手引草(備後)<あいさくてびきぐさ>

あいの最大の特産地は阿波国徳島だが,本書はあい作を備後国福山地方へ普及させようとして出版されたもの。栽培法を絵入りで紹介し,同地方におけるあい作普及に大きな役割を果たした。

油菜録<ゆさいろく>

油菜(あぶらな,なたね)は,灯油・食用油・肥料の原料として欠かせないものになり,農民にとっては換金作物として重要な作物となった。その栽培法を絵入りでくわしく紹介した刊本。

海苔培養法(武蔵)<のりばいようほう>

江戸湾(東京湾)におけるのり養殖の技術書。品川の地先の海域で得たのりの知識を基礎に,のり養殖の将来性や経済性までを説き,江戸湾における「浅草のり」の産地化の土台を築いた。

煙草諸国名産(武蔵)<たばこしょこくめいさん>

江戸の町・九段でたばこ屋を営む狂歌好きの著者が書いたたばこ産地・品質・価格・効能から喫煙マナー・外国事情にいたるたばこ百科。

朝鮮人参耕作記<ちょうせんにんじんこうさくき>

幕府は,すべて輸入に頼っていた朝鮮人参の国産化政策を進め,その栽培と調製にくわしい幕府医官・田村藍水を登用した。本書は栽培の普及を目的にした技術書で,基本は現代にも通じる。