農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見5 自治力 愛するむらは放っておけない

地方消滅論

自治力

人を増やす、増えていく

季刊地域30号(2017年夏号)112ページ


 2014年に元岩手県知事・元総務大臣の増田寛也氏と日本創成会議が発表した「増田レポート」は、20〜39歳「若年女性人口」の30年間の推移予測(2010〜40年)にもとづき、全国の市町村の約半数にあたる896について「消滅する可能性がある」と指摘した。なかでも40年の推計人口が1万人以下の523は「消滅する市町村」と名指しされ、「地方消滅」の衝撃が全国に走った。

「地方消滅」の要因を増田氏らはこう解説する。戦後、大都市圏への人口流出が続いた地方では、大都市圏より30〜50年早く高齢化が進んでいる。今後高齢者人口が減少することで人口減少が一気に進み、それとともに地方の雇用を支えてきた医療・介護サービスの需要も減り、大都市圏への若者層の人口流出が加速度的に進行する。東京圏に移った若者が子供を産んで育ててくれればまだしも、東京は出生率が1・09と全国最下位。東京に人口が吸い寄せられ、地方が消滅し、やがてその東京すらも人口が減少していく。人口のブラックホール現象が起きようとしているのだという。

「増田レポート」は人口の東京一極集中という大きな流れに歯止めをかけ、地方の人口再生力を維持するために、「若者に魅力のある地域拠点都市」を中核とする「新たな集積構造」の構築を提言した(「ストップ少子化・地方元気戦略」)。この提言は国の「地方創生」政策として取り入れられていく。

「増田レポート」がインパクトのある形で東京一極集中に警鐘を鳴らし、東京と地方の関係のあり方を見直すきっかけを与えたことはたしかである。しかし、そのセンセーショナルな打ち出し方も一因となって、レポートをめぐる報道では、ことさら「消滅都市(自治体)」「消滅可能性都市(自治体)」がクローズアップされた。いっぽうで「地方元気戦略」の本質は、東京への人口流出を防ぐ「アンカー(錨)」としての「地域拠点都市」へ、投資と施策を「選択と集中」させることにあった。この二つがあいまって、「周辺の農山漁村地域からの撤退」を強く印象づけたことは否めない。ただでさえ平成の大合併で活力をそがれ、小学校の統廃合(廃校)などで追い打ちをかけられてきた地域では、あきらめムードが加速。実際国は「地域拠点都市」でのコンパクトシティ化(都市の中心部に居住と各種機能を集約して人口を集積。高密度なまちを形成すること)を進めてきた。

 一方で、国はより周辺の中山間地域などには「小さな拠点」を2020年までに1000カ所整備するとしている。「小さな拠点」とは、小学校区などの複数の集落のうち、拠点となる集落のこと。そこでは直売所や農産加工施設、ガソリンスタンド、学校など、暮らしに不可欠な生活サービスや地域活動の場が歩いて動ける範囲に集約され、コミュニティバスなどの交通ネットワークで周辺集落と接続する。

 一見、コンパクトシティと似ているようだが、「小さな拠点」は周辺集落からの撤退=「農村たたみ」ではなく、周辺集落の存続を支え、「ふるさと集落生活圏」を形成するためのものとされている。

→「東京は『人口のブラックホール』」17号(2014年春号)、「田園回帰時代が始まった」19号(2014年秋号)、「『消滅しない地域』の条件」28号(2017年冬号)

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