農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見4 自給力 何でもつくる、みんなでつくる

地あぶら

自給力

季刊地域30号(2017年夏号)104ページ


 かつての農村には菜の花が咲く風景が普通にあり、油も自給していた。ナタネのほかヒマワリ、ゴマ、エゴマ、ツバキなどからは風味豊かな油が搾れる。こうした油脂作物を地域で育てて搾った油を「地あぶら」と呼んでいる。地域の小さい搾油所で圧搾した油は、香りも味もみな個性的。精製しすぎていないので、雑味も色も抗酸化物質も残っていて酸化しにくい。また生搾りか焙煎搾りか、搾油機の違いなどによっても風味が変わる。

 いっぽう市販のサラダ油のほうは、原料はほぼ輸入品。大きな工場で、溶剤で油分を抽出してから徹底して精製、酸化防止剤や消泡剤を加えて製造している。無色でクセがなくサラッとしており、品質のバラつきがないことを価値としているので、同じ食用油でも「地あぶら」とはまったく異なる。

 油脂作物は栽培に比較的手がかからないので耕作放棄地にも向いているし、ナタネやダイズなら経営所得安定対策の補助金もある。搾った後の油粕を畑に肥料として還元したり、天ぷら廃油を地エネのバイオ燃料として使うこともできて、地あぶらはまさに地域経済を回す潤滑油だ。

 日本の食用油のうち国産原料のものは4%とわずかだが、最近では油の機能性成分が注目され、ナタネやヒマワリではコレステロールを下げるオレイン酸が高い品種や、心疾患を予防するαリノレン酸(オメガ3脂肪酸)が多いエゴマの作付面積が増えている。2011年の原発事故後の福島や周辺県では、地中の放射性セシウムを吸収する除染作物としてナタネやヒマワリやダイズを植え、その種子を搾油する動きが広がった。作物体がいくらセシウムを吸収しても、その種子を搾った油にはセシウムが含まれないことがわかっており、栽培・収穫、地あぶらづくりを通して農地復活と営農再開を図っている。

→「特集 地あぶら・廃油・ガソリンスタンド」13号(2013年春号)

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