農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見3 農が基盤、農家が基盤

多面的機能支払

農、農家

助け合って続けていく

季刊地域30号(2017年夏号)98ページ


 そもそも「作物を栽培する」という機能は、農業・農地のほんの一面でしかない。田畑という装置、それにつながる水路やため池などの水利システム、農道やアゼや法面、獣害柵など、農地まわりのインフラは広大で、それらの機能がきちんと維持・発揮されてこそ、生産が可能となる。草刈りもしなくてはならないし、掃除や見回り、メンテナンスも必要だ。「農地集積して効率的な農業を」と掛け声がかかるときには忘れられているこの部分を、昔から当たり前に担ってきたのが「むら」だった。多面的機能支払は、「むらの機能」そのものを応援する交付金だ。

 2007年度に前身の「農地・水・環境保全向上対策」が始まり、14年度から「多面的機能支払交付金」に移行。15年度には、「日本型直接支払」の一部として法制化・施行され、政権が変わろうが関係なく続く安定的な制度になった。

 集落や小学校区、市町村のエリア(または、複数集落を束ねる広域活動組織)で活動組織をつくり、5年間の事業計画を作成して各自治体に提出すると、対象農用地の面積に応じて交付金が出る(国50%、県25%、市町村25%の負担)。

 中山間直接支払と併用も可能。機械や資材などの物品購入はどちらかというと中山間直接支払向きで、多面的機能支払は「共同活動の支援」が目的なので日当などのソフト面に使うことが想定されている。また、この交付金の特徴の一つに、基本方針に沿ってさえいれば、地方裁量で支援メニューを弾力的に運用できることがある。

 福島県須賀川市の活動組織「仁井田の自然環境を守る会」の我妻信幸さんは、「この制度はミニ地方分権だ。やる気があればすごい制度なんだ」と言う。予算を持ち、自分たちで使い方を決め、必要に応じて迅速に対応していく。結果、目に見える形で地域の農地が美しく整備され、維持されていく。「自分たちの地域だ」という意識が一人一人に育つのも特徴だ。

 近年は、そういった多面的の活動組織が母体となり、地域運営組織に発展していく事例も出てきている。宮城県加美町の「石母田ふる里保全会」は、「多面的の活動以外の収益事業もして、地域貢献に使いたい。地区以外の人も活動に巻き込んで農村都市交流もしたい」とNPO法人化。若い人を役員に巻き込んで組織を盤石にした。三重県の「多気町勢和地域資源保全・活用協議会」は一般社団法人となり、産直市の開催、小水力発電や獣害柵の見回り、独居老人の見守りや弁当配達などもやっていく予定という。

→「『多面的機能支払』をとことん使いこなす2016」24号(2016年冬号)、「特集 どれがいい?むらの仕事のカタチ」29号(2017年春号)

多面的機能支払のメニュー

農地維持支払

水路の泥上げや農地法面の草刈り、農道の砂利補充など

資源向上支払(共同活動)

機能診断・ひび割れなどの軽微な補修、植栽活動・生きもの調査、獣害柵の見回り、田んぼダム、農村文化の継承、医療・福祉との連携など

資源向上支払(施設の長寿命化)

業者発注の工事など

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