農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見3 農が基盤、農家が基盤

人・農地プラン

農、農家

「小さい農家がたくさん」が強い

季刊地域30号(2017年夏号)95ページ


 2012年度から農水省が作成を推奨している地域農業マスタープラン。「5年後10年後、地域の農地を使って誰がどのように農業をするのか」を、農家の意向調査や集落・地域での話し合いに基づいてまとめるもの。それまで横並びできた集落の農家を、「中心となる経営体(担い手)」と「それ以外の農家」とに色分け・名簿化することが求められ、「農家の選別政策だ」「集落が分断される」との批判も多かった。プラン作成のメリットとして、農地を10年間白紙委任(貸し手を指定せず貸し出すこと)すると「農地集積協力金(経営転換協力金)」が交付されることについても、「これは離農奨励金だ」「農家減らしのための政策ではないか」と批判を集めた。

 いっぽうで、同時にスタートした「青年就農給付金(現在は農業次世代人材投資資金)」は人気があった。年間150万円が5年間も給付される「経営開始型」の対象になるためには、青年就農者が「中心となる経営体」にプランで位置付けられる必要があったため、地域の十分な話し合いのないまま、市町村(自治体)が主導して「とりあえず、名簿を挙げただけプラン」を広域で作成する例が多く見られた。

 そんななか、人・農地プランづくりを、むらの話し合いの機会にできた地域は強い。広島県東広島市郷曽地区の農業委員・古川みどりさんは当時、「今まで地域の農業のことをみんなで話したことはなかった。(プランのために)ひとまず話し合えてよかった」といっていたが、この話し合いをきっかけにその後、地区はゆっくりゆっくり動き始めた。5年たった現在、集落営農の立ち上げ・法人化が見えてきたところだという。

 14年度からは、農地の流動化を促進する目的で農地中間管理機構(農地バンク)が発足。この制度を企業への農地の開放に結びつけたかった当時の産業競争力会議・規制改革会議は、「借り受け候補者の公募、プロセスの公開」にこだわった。バンクに集まった地域の農地を今後誰が耕していくのかという重大問題に、集落の意思や農業委員が関与するのを排除したかったということだ。だが、さすがにこれは国会で問題となり、農地中間管理機構は、「人・農地プランが策定されている地域に重点を置くとともに、人・農地プランの内容を尊重して事業を行なう」という趣旨の付帯決議が織り込まれて法制化された。「人・農地プラン=地域の意思」が盾となり、規制改革会議らのねらいから地域を守った形だ。

 数年たって最近は、人・農地プランの新規作成も中間管理機構への農地集積も停滞しているが、最初は「とりあえず」で立てたプランでも、みんなで話し合いをして何度でも見直せる。そうしてだんだんプランを自分たちのものとし、集落の農業未来図を豊かにしていけばいい。『季刊地域』では、この作業を「人・農地プランに魂を入れる」と表現してきた。

→「特集 『人・農地プラン』を農家減らしのプランにしない」10号(2012年夏号)、「特集 新農政改革を地域づくりに使わずしてどうする」18号(2014年夏号)

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