農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見3 農が基盤、農家が基盤

農、農家

「小さい農家がたくさん」が強い

季刊地域30号(2017年夏号)91ページ


 米は地域経済の基本である。かつて米の概算金が2万円を超えていた頃、農家は隣の家と競うように農機を新調するという話がよく聞かれた。兼業農家の各家が、勤め先の収入までつぎ込んでトラクタからコンバインまで買い揃えることはムダの象徴のようにいわれたが、余計なお世話だ。農家が地元の農機店や農協から機械を買い、地元の居酒屋に飲みに行くことで地域経済が回っていた。

 生産者米価はこの25年で半分近くまで下落した。原因は米余りのようにいわれるがそうではない。米の消費が減るのに合わせて生産調整もずっと続いてきた。国の政策変更に加え、消費者の米の購入先としてスーパー(量販店)が半分を占めるようになり、その安売り競争に引きずられて下落圧力が強まったこと、流通量の4割を担うJAグループの概算金の設定が、米の相場を引き下げる方向に働いたりしたことが要因だろう。

 米価が下がるにしたがって農家は減り、残った稲作農家の栽培面積が拡大している。だが、むらは大規模農家だけでは維持できないので、集落営農組織が生まれ、多面的機能支払も活かして、むらとむらの米づくりを守る態勢を農家は築いてきた。

 米価下落に対しては、農家なりの反撃も始まっている。山口県阿武町の集落営農法人・(農)福の里は、農協にいったん出荷した米を買い戻し、直営の直売所で販売したり、組合員に保有米・縁故米用として大量に売る。組合員の各家は、法人から買った米を、親戚や離れて暮らす家族に送るだけでなく、つきあいのある知人や飲食店、旅館などに販売する。米価が暴落した2014年は、こうした米が72t、2400袋もあり、概算金暴落の影響を抑えることができた。米価下落に巻き込まれない地元流通を広げているのである。

 おにぎり販売など米の加工に自ら乗り出したり、地元の業務需要を掘り起こす稲作農家もいる。また、「ふるさと納税」の返礼品にすることで地元米のファンを増やす自治体の取り組みは各地に広がった。奮起した単協の中には、独自に上乗せした価格で農家から米を買い取り、全農の販売ルートとは別に独自に販路を開拓するところも出てきた。

 米はご飯になるだけではない。飼料米・飼料イネ(WCS)の助成金を活かして転作で栽培し、地域の畜産農家に販売することで新しい交流が生まれた例、米粉用米や酒米で地域の加工業者や酒蔵との結びつきを深めた例も全国各地に出てきた。

 2018年には農水省が米の生産調整から手を引き、米の直接支払交付金も廃止される。制度変更に右往左往しないためには、この間に進めてきた取り組みを確固としたものにしていくことだろう。農家が米で元気になれば、地方の経済も回りだす。

→「特集 米価下落に反撃開始! お米の流通読本2015」20号(2015年冬号)

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