農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見3 農が基盤、農家が基盤

小農

農、農家

「小さい農家がたくさん」が強い

季刊地域30号(2017年夏号)90ページ


 小農の対義語には大農がある。字面から見れば、小農は小規模な農業、大農は大規模な農業とみえるが、ことはそれほど単純ではない。

 そもそも大農か小農かという論争は明治時代からあった。明治の殖産興業政策の一環として、零細な日本農業を欧米式の畜力・機械力を使った大規模農業に改良し、企業的経営を取り入れようという「大農論」が唱えられるなか、東京農業大学の初代学長である横井時敬は日本には日本の農業の形=小農があると唱えた。その横井にとって日本的小農とは、資本家的に利潤を追求するのではなく、家族労働を所得にかえる農業のあり方であった。そこでは小作と自作の違いはあまり問題にされない。

 時代は下って1970年代、農業近代化の弊害があきらかになるなか、再び小農に光が当てられた。農家、農業、むらの本質を問い続けた守田志郎は、小農か大農かは面積の大小の問題ではなく、生活と生産が一体となった暮らしの中に小農らしさがあると主張した。

 TPPとそれに対応した経済至上主義的な農業改革が跋扈した2015年には、「農の神髄は小農に在る」とする小農学会が九州で設立された。そこでの小農のとらえ方も規模の大小を問わないという点では守田の主張に近いといえる。小農学会の共同代表で農民作家の山下惣一さんは小農とは何かという問いについて、大要こう述べている。

「経営規模の大小や投資額の多寡ではなく、農業の目的による。暮らしを目的に営まれているのが『小農』であり、規模は小さくても雇用主体で利潤追求を目的とするのは『大農』である。小農とは家族農業と同義であり、昔からいう『百姓』のことだ。日本は99%小農の国である。もっというと、世界の農業の99%は小農」

 ひとつはっきりしていることは、大農的なものを追求していけば、おのずと農家減らしに手を貸すことだ。他方、小農とは「農家を減らさない農業のあり方」ともいえる。

→「特集 小農の使命 むらに農家を増やすこと」26号(2016年夏号)

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