農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見2 地エネを生み出す力もある

熱エネあったか自給圏

地エネ

季刊地域30号(2017年夏号)88ページ


 灯油代もガス代も電気代も域外流出ばかりじゃもったいない。エネルギー代の取り戻しは、地域経済だだ漏れバケツ修復の大本命でもある。

 日本の家1軒のエネルギー支出は年間20万円ほど(車の燃料代を除く住宅関連の光熱費)で、5000世帯の地域だと全体で年間10億円にのぼるといわれる。だが、エネルギー関連会社の本社はいずれも都市部で、この巨額の支出がもたらす地域への経済効果はじつに小さい。そうした都市部の会社の売り上げも大半は中東やオーストラリアなどの化石燃料産出国にまわることにはなるのだが、熱エネ代の地域からの流出を止めて、どれだけ地元で回せるおカネに換えられるかが「熱エネあったか自給圏」の醍醐味だ。

 大本命は、やはり薪。500世帯の山形県鶴岡市三瀬地区では、石油代だけで年間1億円が地域外に流出していることが調査でわかった。いっぽうで、かつてスギの大産地だった地元の森林には熱エネ資源量が無尽蔵だと知った住民組織の(株)フォワードさんぜは、林家と連携して、薪と薪ストーブの販売に立ち上がった。石油ストーブを使っている家庭はもちろん、保育園や公共施設にも薪ストーブの設置を勧める。燃焼効率がよくて、わりと安価な「ご当地薪ストーブ」を地元の鉄工所で開発中で、エネルギー代はもちろん、ストーブ代も地元に還元する作戦だ。

 各地で進んでいるのは、公共温泉や国民宿舎など「むらの温泉」への薪ボイラー導入。薪消費が一気に増やせて、地元の山を手入れする人の仕事もつくれる。石油ボイラーのときより燃料代が安くなることも多く、温泉の経営にとっても好都合だ。そのほか、北海道下川町や岩手県紫波町のように、薪ボイラーでつくった熱水を一定地域全体に配管する「地域熱供給システム」などの先進的事例も出てきている。

 さらに、「熱エネあったか自給圏」実現のためには、建物自体を断熱構造にして、燃やすエネルギーを減らす方法も注目だ。日本の家は欧米に比べて断熱性が非常に弱い。これを、分厚い壁と、冷気が伝わってこない二重窓・三重窓を備えた省エネ住宅に改修できれば、ストーブの石油代もエアコンの電気代もグンと減る。断熱改修を地元の大工さんの仕事にできれば、これもまた大きな地域経済効果を生む。

→「特集 熱エネあったか自給圏構想」24号(2016年冬号)

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