農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見1 地域資源にあふれている

地元学

地域資源

見えない宝はもっとある

季刊地域30号(2017年夏号)82ページ


 1990年代初頭に宮城県仙台市と熊本県水俣市でほぼ同時に始まり、全国に広がった地域づくりの考え方・手法。コンサルタントや補助金への依存を避け、ときには外部の人(風の人)や子供の視点も借りて、地元の人(土の人)が主体となって「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」を行なう。

 提唱者の一人、仙台市の結城登美雄氏は、「いたずらに格差を嘆き、都市とくらべて『ないものねだり』の愚痴をこぼすより、この土地を楽しく生きるための『あるもの探し』。それを私はひそかに『地元学』と呼んでいる」「性急に経済による解決を求める人間にはここには何もないと見えてしまうだろうが、自然とともにわが地域を楽しく暮らそうとする地元の人びとの目には、資源は限りなく豊かに広がっているはずである」と述べ(『地元学からの出発』2009年農文協「シリーズ地域の再生」第1巻)、水俣市の吉本哲郎氏は「地元学とは調べ、考え、創りあげていく連続行為である。調べるだけでは単なる資料にすぎない。その意味、あり方、方法などを考え、さらに深く調べ、考え、生活文化を創造していく反復行為が地元学」と述べている(『地元学をはじめよう』2008年、岩波ジュニア新書)。

 その地元学を日常のものとして具現化したのが、1990年代半ばから全国各地に設立された農産物直売所である。そこには都市の消費者が求める農産物だけではなく、ドライフラワーや工芸品など、農家が自らの暮らしを彩り、豊かにすると感じるものも並び、それに都市の消費者も魅きつけられている。

 また、農家が地域の伝統食を提供する農家レストランや、地域の家庭料理を持ち寄る「食の文化祭」「家庭料理大集合」「○○地区の四季を食べる会」は、「食の地元学」といえる。コシヒカリやあきたこまちといったメジャー品種ではなく、試験場に眠っていた山間高冷地向きの「東北181号」(後の「ゆきむすび」)を発掘し、地域の旅館業者や商店主、消費者が支え手となって定着させた「鳴子の米プロジェクト」は、「米の地元学」である。

 また、地元学における「あるもの探し」の対象は、地域資源=足元の「宝」にとどまらない。耕作放棄地の再生や空き家の管理、墓掃除、草刈り、独居世帯の見守りといった地域の課題=足元の「困りごと」を発掘し、寄り添い、解決することで収入を得ることもまた、「仕事の地元学」である。

→「特集 地元学でおこす『あと3万円』の仕事」1号(2010年春号)

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