農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見1 地域資源にあふれている

自伐林家・自伐型林業

地域資源

山の恵みは無限大

季刊地域30号(2017年夏号)74ページ


 自分の山の木を、自分で切ることを「自伐」という。わざわざそんな言い方がされるのは、日本では長年「山の仕事は、森林組合か大規模林業事業体に委託してやってもらうもの」との感覚が当たり前だったからだ。背景には、施業集約での大規模林業育成という政策誘導があった。

 だが、木材価格が低迷して以来、施業を外部に委託すると山主の手取りはほとんど残らなくなった。「木を切ったら赤字になった」という事態も発生し、「山は儲からない」という意識が全国的に蔓延している。だがいっぽうで最近は「委託せず、自力で切って搬出・販売したら、施業委託費がかからないぶん意外と手元におカネが残った」と実感する人も増えている。

 愛媛県西予市でミカン2ha山28‌ha経営する農家林家・菊池俊一郎さんは、「今、自伐林家は儲からないわけがない」と豪語する。「祖父や親父の代が育ててくれた山の木が、だいたいどこでも切り時になってます。それを切って売るだけですもん。何の投資もなしで回収するだけ。赤字になりようがない」。菊池さんの山仕事用の所有機械はチェンソーと20年選手の林内作業車1台のみ。コストをかけずに何でも自分でやり、その過程で山と木を知り尽くし、造材の技術を磨いて高単価の販売を実現する。国が進める高性能林業機械にモノをいわせた企業的な大規模経営路線とは、明らかに方向が違っている。「自伐林家」という存在は、「小農」に通じるものがありそうだ。

「小さい林業」ともいえる、そんな山とのつきあい方に魅力を感じる若者も増えている。だがUIターンでむらに来て、林業を仕事にしたいと思っても、彼らには持ち山がない。そこで山主に代わって手入れを請け負い、作業道づくりや間伐の補助金も活かしながら小さい林業経営を成立させる事例が出てきている。これが「自伐型林業」。高知県佐川町や島根県津和野町、岩手県陸前高田市など、自伐型林業に特化した地域おこし協力隊を募集する自治体も出てきた。 2013年にはNPO法人自伐型林業推進協議会が設立され、各地の小さい林業の担い手の育成やネットワーク化の動きを強めている。

→「『自伐林家は儲かりますよ』と言う男」19号(2014年秋号)、「特集 山の仕事で田園回帰」23号(2015年秋号)、「自伐林家も小農だ」26号(2016年夏号)

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