農村力発見事典 『季刊地域』の用語集 59ワード

農村力発見1 地域資源にあふれている

地域資源

山の恵みは無限大

季刊地域30号(2017年夏号)73ページ


 農家は所有農地を「田んぼ」や「畑」と呼ぶのと同じように、所有山林を「山」と呼ぶ。しかし最近は、「どうせ山は儲からないから」とほとんど足を踏み入れず、持ち山を見て見ぬふりしている人も多い。

 日本は世界有数の森林大国で、森林面積およそ2500万haと国土の3分の2を占める。そのうち7割が民有林だ。昭和の前半までは、裏山はほとんどが広葉樹の植わる薪炭林で「エネルギー自給のための山」という位置づけだった。かまどや風呂、囲炉裏など日常の燃料用の薪生産のほか、炭焼きした炭は換金用にも重宝された。広葉樹は伐採しても切り株からまた萌芽し(萌芽更新)、15〜30年で成木となってまた切れる。毎年使う分だけを計画的に切っていけば、山は持続し、エネルギーが足りなくなる心配はない時代だった。

 やがて1955年前後から、家庭用の燃料が電気・石油・ガスへと転換開始(エネルギー革命)。薪炭林は急速に役目を終えていく。いっぽう戦後復興の建設用木材需要が急増。高度経済成長期へ向けて、薪炭林を伐採し、桑畑も伐採し、カヤ場や田んぼまでもつぶして針葉樹のスギ・ヒノキを植える拡大造林が各地で急速に進んだ。

 住宅建設ラッシュのころは木材が高単価で売れた。「木を植えることは銀行に貯金するより価値のあること」といわれ、現在の人工林約1000万haのうち、400万haがこの拡大造林期に植えられた。実際、スギやヒノキを子供の大学進学や嫁入り資金にしたという話は多い。ところが、64年の木材自由化以降は輸入材もどんどん増えて、国産木材価格はじわじわと下がり始める。物価上昇の影響もあって価格ピークは80年だったが、バブルがはじけると急落。55年当時はスギ丸太1m3で大卒公務員を19日雇えたものが、2010年には1日しか雇えないほど、木材の価値は落ちてしまった。

 現在は、間伐などの手入れがされない針葉樹の山が全国に急拡大。光の入らない暗い山は木がヒョロヒョロで、用材として価値が低いばかりか、根が浅いためゲリラ豪雨などで土砂崩れも起きやすく、防災上も問題が大きくなっている。

 だが、近年の薪ブームや自伐型林業は、そんな山に再度、可能性を見出せる動きだ。木材単価は昔に比べると確かに安いが、人に頼まず少しずつ自分で切れば、経費がかからない分、まるまる儲けになるのも事実。高単価がつかない細い木でも、薪にすれば売れるし、木質バイオマス発電の燃料として引っ張りだこの状況も生まれている。最近は、山の多面的機能の補助金も使えるようになった。『季刊地域』では山について、特集で「『木は切ってもカネにならない』は本当か?」と問い直し、「見て見ぬふりをやめるとき」と、提案を重ねてきた。

→「特集 山、見て見ぬふりをやめるとき」16号(2014年冬号)、「特集 『木は切ってもカネにならない』は本当か?」19号(2014年秋号)

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