しか煮は、相模湾で秋にとれるヒラソウダと玉ねぎを甘辛く炒め煮にした真鶴《まなづる》町の家庭料理で、名前の由来は「鹿のような味がする」とも「魚の表皮がしかって(光って)いる」とも諸説あります。 古くは漁師料理で、漁船の調理当番が釣ったばかりのヒラソウダでつくった船員のまかない飯でした。船の性能がよ……
黒潮にのって北上するかつおは3~5月に県南部の海域に近づくため、田辺市の漁師は小型漁船で近海かつおを一本釣りし、3~4℃の冷水(真水と海水を合わせた水)につけ、鮮度が落ちないうちに日帰りで港に戻ります。漁獲して1時間ほどで食べると、まだ死後硬直していないかつおはもっちりとして噛みきれないぐらいの……
5~7月の伊豆諸島の新島や式根島で、小さい赤いかがとれたときだけの旬の味です。赤いかは剣先いかのことで、肉厚で甘味があり、加熱してもやわらかいのが特徴です。いかめしには小さいものを使います。それは大きいと煮上がったときに、いかがかたかったり、ご飯に芯ができていたりするからです。小さいいかに米を詰……
明石海峡の速い潮流に抗って泳ぐため、「明石のたこは立って歩く」といわれるほど足が太く短く、身が引き締まり歯応えがよくなります。また、エサが豊富なので甘味が強いともいわれています。たこめしは生のたこやゆでたたこでもつくりますが、干したこはたこのうま味が濃く好まれます。また一年中楽しむことができます……
紀伊半島北西部にある有田川町の中でも東に位置し海から遠い清水では、塩さばと、煮た根菜や油揚げ、高野豆腐などをご飯に混ぜ、かきまぜをつくります。今でこそ食べたいときにつくりますが、昔は刺身などは正月だけで、普段は塩さばがごちそう。その塩さばを使うかきまぜは、田植え休みや雨休み、みかんの収穫が終わっ……
炒めた豆腐を炊きこんだユニークなご飯で、豆腐めしとも呼ばれます。「どんどろけ」とは、鳥取地方の方言で雷のこと。豆腐を油で炒めるときに雷に似た音がすることからこの名前がつきました。 今では日本有数の漁港もある鳥取県ですが、以前は船の出入りに好都合な港が少なく、魚は貴重品でした。そのため、昔から豆腐……
県東部の山間部、八頭地域でつくられている混ぜご飯です。具は、豆腐や鶏肉、ちくわ、こんにゃく、油揚げなどいつでもあるものに加え、春は木の芽やたけのこ、ふき、初夏はそら豆と、季節の食材を入れて四季の味を楽しみました。脂ののった焼きさばが入ると、特有の旨みが加わり、ぐっとおいしくなります。 日常的にも……
かつおだしと豚だしに干し椎茸も入って、だしのきいた深いうま味のご飯です。「ジューシー」とは炊きこみご飯・雑炊の意味ですが、沖縄ではクファ(かたい)ジューシーという炊きこみご飯、ヤファラ(やわらかい)ジューシーというおじやのような汁けの多い雑炊の2種類があります。クファジューシーは豚の脂でコクとつ……
醤油味のおにぎりというと焼きおにぎりが一般的ですが、これは白飯を生醤油でにぎり、のりで包んだものです。白飯とのりのおいしさに醤油のうま味と香りが加わり、アルミホイルで包んでおくと、のりのしっとり感が増し、さらに味わい深くなります。北海道ではのりおにぎりに塩を使う家庭と醤油を使う家庭があり、道内の……
富山でおにぎりといえば、のりではなくとろろ昆布で巻いたおにぎりのことです。とろろ昆布は酢漬けした昆布を薄く削ったもので、ほんのりとした酸味と昆布の風味でご飯との相性が抜群なのです。 他県ではとろろ昆布はときどき吸い物やうどんに入れるくらいのようですが、富山では、県全域の家庭で常備されています。町……
「そば」といっても麺ではなく、殻を除いたそばの実(そば米)をゆでて、冷たいそばつゆをかけます。酒田をはじめとする庄内地方の家庭料理で、来客時のもてなし料理や精進料理の一品とされてきました。元は関西方面の寺院で食べられていたものが、北前船の西回り航路で酒田に伝えられ、料理屋でのもてなしの食膳にとり……
県南西部の佐野市を含む、群馬県にまたがる両毛《りょうもう》地区では小麦の生産がさかんで、夕方には毎日のようにうどんを打って夕食にしました。そんな土地柄で、そばは主に来客やお祝いの席に出されましたが、「かてそば」といわれる大根そばは日常食として食べました。大根が混ざってボリュームが増えたそばは、さ……