<農薬以外による防除法 耕種的防除法・資材>

熱水注入(自走式熱湯散水方式)



ねらいと効果

●土壌に熱湯を散布することによって消毒する「熱湯土壌消毒法」は,土壌病害虫の防除のみならず土壌に集積した塩類の除去にも抜群の効果を有する。また,その効果は少なくとも3年間は持続する。

●処理後の30cmまでの作土層では,フザリウム菌の死滅温度である55℃以上の温度が22時間にもわたって保たれる(図1)。

●熱湯処理後には少なくとも30cmまでの作土層のフザリウム菌およびセンチュウなどはいずれも検出限界以下まで減少する(表1)。

●ECは,30cmまでの作土層では0.1以下まで低下する。また,表層に集積したカリについても処理前の2分の1以下の値となるなど,ほぼ完璧な除塩効果が得られる(表2)。

●pHも土壌深度にかかわりなく熱湯処理により適正値まで上昇する(表2)。

装置のしくみ

●装置は,A重油によるボイラー(21.8万kcal),散水器および散水器を牽引するウインチ(200V電源)などを組み合わせたもので(図2),10aあたり300t程度の熱湯を散水する(図3)。

●熱水散布後は,保温のため土壌表面を散水幅に合わせた大きさのポリフィルムまたはアルミ蒸着フィルムで被覆する(図3)。

●この熱湯消毒に必要な資材は,10a当たりA重油が約2kl,水が約300tおよび3相200V電源である。

処理方法

●透水性を良くするため,散水前に十分深耕する。

●散水器を処理を開始する場所に置き,施設の間口に合わせて散布幅を決め,ウインチの位置を調整した後,散水器の上から散水する部分全体をポリフィルムで被覆し,四隅を土嚢などで固定する。

●ボイラーへの給水と燃料供給系を組み立て,散水器を置いた場所付近のデッドスペースを消毒した後,ウインチで1時間に2.3~2.4mのスピードで牽引を始め,自動散水運転に入る。

●一工程が終了したらウインチを移動し,デッドスペースを手処理した後,次の処理場所に散水器を移動し,再び散水作業に入る。

●施設の形状をうまく考慮して作業すれば,10aを約4日で処理できる。

●少なくとも3日はハウスを締め切って保温した後,被覆フィルムをはずし,耕うんできる程度まで土壌を乾燥させる。

●理想的な土壌微生物相を復活させるため,できるだけ早いうちに堆肥などの有機質資材を散布し,土壌と混和する。

●経費は,井戸水を使った場合,A重油の値段が1l当たり27円50銭として5万5千円,電気代が5千円および熱湯処理装置のリース代の5万円を加えて全体で約11万円程度となる。水道水を利用した場合にはこれに水道料金が上乗せされる。

入手先,価格

●ここで紹介する熱水散水装置は,神奈川肥料株式会社(〒259-1219神奈川県平塚市広川93,TEL.0463-58-5757,FAX.0463-58-2775,代表取締役社長窪田耕一氏)が1セット260万円で受注販売している。

■執筆 北 宜裕(神奈川県農業総合研究所)

(1999年)